ブ牛評

F君にもらった村上龍『テニスボーイの憂鬱』より。

－女だ。
誰かを苦福にすることなどできない、他人にしてやれることなんか何もない、他人を分かってあげるのも無理だ、他人に自分をわかって貰うのも無理だ、他人を支配するのも不可能だし、支配されるのもできない、そのことを、女だけがわからせてくれる。電話をするたびに胸が震えるような素晴らしい女だけが、そのことを教えてくれるのだ。他人は必要ではない、そんな生き方をしなければいけない。つまりグラスのシャンペンみたいにキラキラと輝いていなければいけない、他人に対してできることは、キラキラと輝いている自分を見せてやることだけなのだ・・・・・・・・

いつもキラキラしていろ、他人をわかろうとしたり何かしてあげようとしたり他人からわかって貰おうとしたり何かしてもらおうとしたりするな、自分がキラキラと輝いているときが何よりも大切なのだ、それさえわかっていれば美しい女とおいしいビールは向こうからやってくる－

一度読むのやめたのに、もらって読み通した珍しい本でした。
20年以上前の作品なのに古くささがない。
あえて言えばマッケンローとかボルグくらいか。きっと本井可奈子さんのお化粧も今とは違うんでしょうが。

こっからバブルを経て『ノルウェイの森』なんかに到る個人やら自我の不在、という文脈から日本社会の空気や流れが読める、のかも。しかし子供の頃にバブルだなんて気付かなかったけどなあ。
大学卒業したら、それまでは「失われた10年」とか言われてたし。

これから、どうなんのかなあ。

島耕作がワインやってる時に関西のおっさんが『環境問題やら社会問題やら、なんだかんだ言っても場当たり的に処理して先送りにするのが人間の習性』みたいなこと言ってたけど、読んだ時ほんとうにその通りだなと思ったものです。

そして、中国はこれからこういう時代を迎える、はず。
或いは、迎えつつ空虚を覚える。何億もの貧しい人々を抱えながら。
実に興味深い。

キラキラしてさえすればいい、
とはとても言い切れないけど、楽しいのがいいなあやっぱり。
中国へ来てそう思うようになったのか、増幅されたのかわからないけど。

楽しいのが一番。できれば最後はポックリでお願いしたい。